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高齢者早期腎癌の生存期間は、全摘より部分切除のほうが長い

2012年5月10日

早期腎癌の高齢患者に対しては、根治的腎摘除術ではなく、腎部分切除術のほうが、生存期間が長いとするミシガン大学の研究結果が発表された(JAMA. 2012; 307(15): 1629-1635)。しかし一方では、癌特異的生存率は、腎部分切除術か根治的腎摘除術か否かにかかわらず同程度であった。

著者らは、1992~2007年の間に4 cm以下の腎癌(stage T1a)に対して手術を受けた7,138例の患者(メディケア受給者)データを解析した。7,138例のうち1,925例(27.0%)に腎部分切除術、5,213例(73.0%)に根治的腎摘除術が施行されていた。中央値62カ月間の追跡期間に、腎部分切除術群の487例(25.3%)、根治的腎摘除術群の2,164例(41.5%)が死亡し、腎癌による死亡は腎部分切除術群が37例(1.9%)、根治的腎摘除術群が222例(4.3%)であった。腎部分切除術群は根治的腎摘除術群と比べ死亡ハザード比(HR)が0.54と有意に低かったが(95% CI: 0.34-0.85)、腎癌特異的生存率には差がなかった(HR 0.82[95% CI: 0.19-3.49])。また、根治的腎摘除術群と比較した腎部分切除術群の術後2、5、8年時点の生存率上昇を予測したところ、それぞれ5.6%(95% CI: 1.9-9.3)、11.8%(95% CI: 3.9-19.7)、15.5%(95% CI: 5.0-26.0)有意に高かった(p<0.001)。

診療ガイドラインでは、現在ほとんどの早期腎癌患者に対して慢性腎臓病(CKD)発症のリスクを減少させる腎部分切除術を推奨しているが、本術式はまだ普及しているとはいえず、今回の試験で腎部分切除術を受けていたのは患者の27%のみであった。腎部分切除術は根治的腎摘除術よりも技術的に難しく、どちらの術式を選択するにしてもベネフィットとリスクがあることを著者らは認めている。

医学ライター・喜多さくら

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